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(4)「△△鬼 “gui”の正体は?」 |
![]() この場合、要注意なのは、日本語の「赤鬼」、「青鬼」、つまり、地獄に勤務するあのおっかない形相をして罪人を苦しめるとかいう「鬼」や「吸血鬼」「殺人鬼」など、泣く子も黙る「鬼」とは異なる点です。結局、“△△鬼”は「変な嗜好や悪癖を持つ変わり者、常人とは異なる者」を指し、ほとんどが特に恐がるほどのこともない相手なんです。例を挙げると、“馋鬼 chan gui”=食いしん坊(馋=饞・食をむさぼる)、“烟鬼 yan gui”=ヘビースモーカー(烟=煙)、“赌鬼 du gui”=ギャンブル狂(赌=賭)、“色鬼 se gui”=色情狂などがある。 ① “神 shen” ② “兽 shou=獣” ③ “鬼 gui” ④ “妖 yao” さて、この中で、①神③幽霊④妖怪の3つには共通点があります。いずれも人々の想像の世界にしか存在しないということ。わずかに②ケダモノだけは、人間と同じくこの世に実在する。しかも、同じ哺乳類に属しながら、いろんな点で人間と対立し、対照的です。したがって、②“兽 shou=獣”が正解となります。ヒトは道具を作り、それを労働に使う。しかも言葉によって物事を思考する能力を持つ高等動物であるのに対し、全身を毛で覆われた四足のケモノは、道具を作れず、言葉も話せない。中国語の“兽 shou=獣”には、ケモノの意味のほかに、転じて「野蛮である」、「凶悪、残忍である」との意味を持ち、凶悪な心を“兽心 shouxin”、残忍な行為を“兽行 shouxing”という。 ヒトと、ケダモノ・家畜とを対立的に並列した言い方を中国語の成語の中から拾ってみたら、たしかに、両者を含む連語コンビは多い。例えば、“人面兽心 ren mian shou xin(人の皮をかぶったケダモノ)”“人畜两旺 ren chu liang wang(人も壮健、家畜も元気)”“人怕出名,猪怕肥 ren pa chuming,zhu pa fei(人は名が出るのを恐れ、ブタは太るのを恐れる=出る杭は打たれる)”“人死留名,虎死留皮 ren si liu ming ,hu si liu pi(人は死んで名を残し、トラは死んで皮を残す)”などなど。 ![]() いっぽう、「“人”“鬼”」コンビもあります。“人不人,鬼不鬼 ren bu ren gui bu gui(人間ともつかず、化け物ともつかない=得体の知れない者)”“人不知,鬼不觉 ren bu zhi,gui bu jue(誰も知らぬ間にこっそりと)”など、といった具合です。こうしてみると、「“人”&“鬼”」も広義の対立語コンビといえるかもしれない。 また、“神”と“鬼”も言葉の相性がよく、よく成語の中に揃って登場する。“神出鬼没 shen chu gui mo(神出鬼没)”“鬼斧神差 gui fu shen chai(離れ技)”“牛鬼蛇神 niu gui she shen(妖怪変化)”“神不知,鬼不觉 shen bu zhi,gui bu jue(誰も知らぬ間にこっそりと)”などがあります。そういえば、類似した言い方として、日本語にも、「人畜無害」とか、戦前の「鬼畜米英」などの言い方がありますね。 |